http://www.yageta-law.jp/site_debt/topic/T005.html以下記事転載
司法書士の権限外(140万円超)業務と報酬額

司法書士が法律上扱えない元本140万円を超える過払金について,裁判書類作成代行(本人支援業務)で過払金を回収した場合,依頼者が支払うべき報酬額はいくらか?

裁判をしなかった場合,報酬は発生するか?

140万円を超える事案について支払った報酬を返してもらう方法は?

 

(目次)

 140万円超の事案を扱うと弁護士法違反(非弁行為)となる

 140万円の基準-最高裁判決平成28年6月27日

 本人訴訟支援・本人名義での交渉の違法性-最判平成28年6月27日が示したもの

   ~本人訴訟支援業務の適法性を否定~

 実質的な代理業務か否かの基準

   ~郵送・連絡の窓口になっているか

   ・・・裁判所は司法書士が送達受取人になることを認めるべきではない

 裁判書作成業務は代理業務と同じ報酬を請求できない

 裁判をせず解決した場合,裁判書類の作成がなく,報酬は発生しない

 140万超の紛争の相談に応じることができない

 権限外業務と司法書士の損害賠償責任(大阪高裁判決平成26年5月29日)

   ・・・支払った報酬相当額の賠償責任

   ・・・説明・助言義務違反による慰謝料

 適当な説明と裁判書類作成業務に「裁判日当」「交通費」!?

 司法書士の権限外業務に対する適正な報酬額とは

 代理業務と同じ報酬額を請求・支払わされたら

   ・・・本人訴訟をしていない場合

   ・・・本人訴訟をした場合

      ・本人訴訟の実体がない場合

      ・実質的には代理業務の場合

      ・実質的にも裁判書類作成業務の場合      

 「自分で訴訟をするの?」と思ったら,迷わず弁護士へ切替えを

 貸金業者が助長する司法書士の権限外業務

140万円超の事案を扱うと弁護士法違反(非弁行為)となる

法律事務は,本来,弁護士しか行うことができず,他の士業は,法律で認められた範囲でのみ業務を行うことができます。

司法書士は,法律上,訴額140万円を超える民事事件の相談・和解・代理を行えません(司法書士法3条)。

これを行うと弁護士法違反(非弁行為)として刑事処罰の対象となります。

懲戒や逮捕者が出てきましたが,最大手の「司法書士法人新宿事務所(代表阿部亮司法書士)」の複数の司法書士に弁護士法(非弁行為)の疑いがあるとして,大手信販会社が監督官庁である東京法務局に懲戒請求を申し立てたことが報道されています(H28.2.12朝日新聞)。140万円をこえる過払い金案件を扱ったとしているとのことです。

(参考:司法書士法人新宿事務所の指針を逸脱した報酬問題等)

140万円の基準-最高裁判決平成28年6月27日

何を基準に140万円を超えるか決定されるか。

長く争われてきましたが,最高裁判所第一小法廷判決平成28年6月27日により解決しました。

最高裁は,140万円を超えるか否かは,個々の債権毎に,委任者や,受任者である認定司法書士との関係だけでなく,和解の交渉の相手方など第三者との関係でも,客観的かつ明確な基準によって決められるべきであると判断しました。

交渉の相手方である第三者との間でも,客観的かつ明確な基準によって決められる必要があるということは,貸金業者が客観的かつ明確な基準により140万円超の事案であると主張してきた場合は,140万円以下の事案であるとはできなことを意味します。

同一の係争物の価額算出基準として,「客観的な基準」は,複数あり得ます。例えば,計算方法についての無利息方式,利息非充当方式,利息充当方式など複数の計算方法が挙げられます。

しかし,それら,どれか1つで140万円以下になれば良いというのではなく,どの計算方法で計算しても140万円以下にならなければ,「客観的,かつ,明確な基準」によるとは言えないでしょう。

すると,司法書士は,債務については,最も依頼者に不利に計算してその額が140万円を超えるか否かを判断し,過払金については,最も依頼者に有利に計算してその額が140万円を超えるか否かを判断する必要が生じます。

こ詳細は,「弁護士と司法書士の違い/140万円の基準-最判平成28年6月27日」をご覧下さい。

本人訴訟支援,本人名義での交渉の違法性-最判平成28年6月27日が示したもの

~140万超なら本人訴訟支援・本人名義での交渉でも違法~

上記最高裁平成28年6月27日は,司法書士が債務整理を受任し,武富士に対して約613万円の過払金返還請求訴訟をして,499万円の返還を受ける裁判外の和解を成立させ,また,CFJとの間で493万円あまりを分割して支払う内容の裁判外の和解を成立させた事案について,「上告人(※当該司法書士)は,本件各債権にかかる裁判外の和解について代理することができないにもかわらず,違法にこれを行って報酬を受領したものであるから,不法行為による損害賠償として上記報酬相当額の支払い義務を負うというべきである。」と判断しています。

ここで重要なのは,武富士及びCFJとの交渉・訴訟・裁判外の和解は,司法書士が代理人名義で行ったものではなく,あくまで,司法書士は,本人と武富士・CFJとの間を取り次ぎ,和解に立ち会ったという形を取り,武富士に対する過払金返還請求については本人訴訟支援(裁判書類作成業務)として提訴し,和解書も,本人自身が署名押印しており,司法書士が代理人として署名押印していなかった,すなわち,本人名義の交渉・訴訟・和解であったにもかかわらず,最高裁は,代理できない範囲の業務であるから違法であると判断していることです。

第1審(和歌山地裁判決平成24年3月13日)が認定した事実によれば,その経過は,次の通りです。

 

(武富士に対する過払金返還請求について)

  1. 司法書士は,平成19年10月29日,武富士に対し,本人X1の債務整理を受任した旨の通知(今後,本人X1ではなく,被告事務所に連絡するよう記載されていた。)を発送した。
  2. 司法書士が,武富士から開示された取引履歴を前提にして,X1武富士取引を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると,249万7009円の過払金元本が発生することが判明した。また,昭和57年6月12日の貸金債務残高が取引履歴に記載された44万3100円ではなく0円であることを前提にして,武富士取引を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると,613万3096円の過払金元本が発生することが判明した。
  3. 司法書士は,平成20年9月4日,本人らに対し,X1武富士取引について訴訟の準備をするように言った。
  4. 司法書士は,同年11月18日,和歌山地方裁判所に対し,X1武富士取引によって発生する過払金の返還を求める不当利得返還訴訟の訴状を提出した。
  5. 武富士は,同年12月19日,司法書士に対し,答弁書を送付し,499万円を平成21年2月末ころに支払う内容で和解したい旨を連絡した。
  6. 司法書士は,平成20年12月20日,本人X1に対し,上記の武富士の連絡を伝えた。
  7. 和歌山地方裁判所は,第1回口頭弁論期日を同月22日午前10時と指定していたが,同日,これを取り消し,追って指定するとした。
  8. 司法書士は,同日,本人X1に対し,武富士から受領した答弁書を交付した。 本人X1は,同日,被告に対し,上記の内容で和解する旨を回答した。 そこで,司法書士は,同日,武富士に対し,和解する旨を伝えた。 その後,本人X1も,同日,武富士に対し,和解する旨を回答した。
  9. 司法書士は,武富士から和解金の支払期限を平成21年2月27日とする旨の連絡を受け,和解契約書を作成し,平成20年12月26日,本人X1に対し,その和解契約書を送付した。
  10. 司法書士は,同月30日,本人X1から,同人の署名押印のされた和解契約書を受領した。
  11. 司法書士は,平成21年1月6日,和歌山地方裁判所に対し,裁判外で和解が成立したので,口頭弁論期日を追って指定として欲しい旨を電話した。
  12. 司法書士は, 同年2月20日,本人X1と武富士との間で,武富士が本人X1に対し不当利得返還債務として同月27日限り499万円を支払う旨の和解契約が成立した。 司法書士は,和解契約書に「書類作成者」名義で記名押印した。 武富士は,同月27日,本人X1名義のきのくに信用金庫の普通預金口座に和解金499万円を振り込んだ。
  13. 本人ら及び司法書士は,同年3月5日,X1武富士取引に係る過払金返還額を確認した。司法書士は,同月6日,本人X1から依頼されて,X1武富士取引に係る過払金返還額のうち20万円を本人X1名義の株式会社南都銀行の普通預金口座に入金した。
  14. 司法書士は,同月18日,和歌山地方裁判所に対し,訴えの取下書を提出した。

 

(CFJの債務についての分割弁済和解について)

  1. 司法書士は,平成19年10月29日,CFJに対し,本人X2の債務整理を受任した旨の受任通知(今後,依頼者X2ではなく,司法書士事務所に連絡するよう記載されていた。)を発送した。
  2. 司法書士が,CFJから開示された取引履歴を前提にして,利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると,523万3783円の債務が残ることが判明した。
  3. CFJは,平成20年1月28日,司法書士に対し,本人X2から債務を分割弁済してもらう内容で和解したい旨を連絡した。
  4. これに対し,司法書士は,CFJに対し,本人X2が債務を1か月約5万円で分割弁済する内容での和解を望んでいる旨を回答した。
  5. すると,CFJは,債務元本493万4401円及びこれに対する平成20年1月28日から支払済みまで年6%の利息を,同年3月1日から毎月1日限り5万5000円ずつ(ただし,最終弁済期には2万3299円)120回に分けて分割弁済する内容で和解したい旨を連絡した。
  6. 司法書士は,同年1月28日,本人X2に対し,上記のCFJの連絡を伝えた。
  7. 司法書士は,同年2月20日,本人X2に対し,CFJの和解案に対する回答を催促する旨の手紙を送付した。
  8. 本人X2は,同月25日,司法書士に対し,CFJの和解案に応じる旨を回答した。
    司法書士は,同月28日,CFJに対し,CFJの和解案に応じる旨を伝えた。
  9. 司法書士は,同月29日,CFJからファックス送信された和解書を受領した。
    その内容は,本人X2が,債務元本493万4401円及びこれに対する同月27日から支払済みまで年6%の利息を,同年4月1日から毎月1日限り5万5000円ずつ(ただし,最終弁済期には2万4032円)120回に分けて分割弁済する,ただし,2回以上支払を怠った場合には期限の利益を喪失し,期限の利益喪失日の翌日から年7%の遅延損害金を付加して支払うというものであった。
  10. 司法書士は,同年3月1日,本人X2に対し,和解書を送付した。
  11. その後,司法書士は,本人X2から,同人の署名押印のされた和解書を受領した。
  12. 司法書士は,この和解書に,「和解立会人」名義で記名押印し,CFJに送付した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・http://kuronekonotsubuyaki.blog.fc2.com/blog-entry-1161.html

司法書士による債務整理は何が問題だったのか?

  • 2016/06/27
  •  
  • 22:13
 今回は英国のEU離脱について書く予定でしたが,重要な話題が出てきましたので,予定を変更します。
 6月27日,司法書士の債務整理業務に関する最高裁判決がありました。

<参 照>
債務整理、債権額が基準=司法書士の範囲狭く―最高裁が初判断(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160627-00000101-jij-soci
平成26年(受)第1813号,第1814号 損害賠償請求事件 平成28年6月27日 第一小法廷判決(裁判所HP)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/969/085969_hanrei.pdf

 メディアの記事だけを読めば,要するに弁護士と司法書士の縄張り争いがあり,裁判所は弁護士を勝たせただけのこと,消費者にはどうでもよい話,といった印象を持たれるかも知れません。
 しかし,最高裁の判決文を読むと,本件は要旨以下のような事案であり,司法書士によるこのような代理行為が行われても,消費者にとって果たして問題がないと言えるでしょうか。
(注:司法書士のうち,債務整理事件を受任できるのは一定の講習を受け法務大臣の認定を受けた「認定司法書士」だけであり,本件も「認定司法書士」が関与した事案ですが,この記事では特に断りのない限り,「認定司法書士」のことを単に司法書士と表記しています。)

(1) Aは,複数の貸金業者から金銭の借り入れを行っており,その返済に窮したため,司法書士に債務整理を依頼しました。
(2) 司法書士が貸金業者から取引経過の開示を受けて,利息制限法に基づく引き直し計算をしたところ,貸付金元本の総額は1210万円余りであり,過払金の総額は1900万円余りでした。


 このような状況の場合,仮にAが(まともな)弁護士に債務整理を依頼していれば,過払金約1900万円を業者から取り立て,そのお金で残っている1210万円余りの債務を完済し,弁護士費用も過払金の残りで十分賄うことができるので,Aは追加で一銭も支払うことなく債務を整理することができ,過払金の回収が(貸金業者倒産などの)支障なく行われれば,余った過払い金が手元に返ってくることさえ期待できるわけです。
 一方,業者ごとの債権額は140万円を超えているものが多く,債権額を基準とする弁護士会主張の解釈に従えば,司法書士が当該事件の債務整理を受任できないことは客観的に明らかですが,依頼者の受ける「経済的利益」を基準とする司法書士会主張の解釈に従えば,依頼者がどの程度の経済的利益を受けるかは事件処理が完了するまで分からないので,事実上受任時点における制限は無いことになります。

(3) 上記受任案件のうち,Aと貸金業者Bとの取引については,貸付金元本が517万円余りでした。司法書士はAを代理して,そのうち493万円余りに年6%の将来利息を付して,月額5万5000円ずつ120回で分割返済する旨の裁判外の和解を成立させました。

 この案件の場合,Aが支払う金額は10年間で660万円となり,本来Aが支払うべき金額(517万円余りプラス遅延利息等)と比較すれば,和解によってAが受ける経済的利益は140万円を超えないため,司法書士会主張の解釈では,司法書士による代理が認められることになります。
 しかし,債務整理に関する弁護士会の三会統一基準では,任意整理による和解に将来利息は付さないものとされており,またあまりに長期間の分割返済では依頼者が途中で返済に息詰まる可能性が高く,業者も和解に応じない可能性が高くなるので,3年間の36回払いで支払い可能な範囲に収めるのが普通です。まともな弁護士の常識からすれば,年6%もの将来利息を約して,10年間もの長期分割で和解することはあまりにも異常であり,債務者の経済的更生の観点からも望ましくありません。
 まともな弁護士が受任した場合,他の業者から過払金の回収が見込まれるのであれば,回収金からの一括払いで和解するでしょうし,過払金の回収不能等により依頼者の分割払いによる和解をする場合であっても,債権額が大きく3年間36回の分割払いで対応できない事案であれば,任意整理による解決は原則として不適当であり,自己破産や個人再生など他の手段を検討するということになります。
 これに対し,経済的利益140万円以内という縛りの中で司法書士が事件処理の判断をすると,何が何でも自らの権限内で事を収めようとするあまり,依頼者に不利益な和解を成立させてしまうおそれがあります。たとえば,弁護士や司法書士が関与しなかった場合に依頼者が本来支払うべき債務額が800万円であり,弁護士や司法書士が交渉すれば本来それを517万円程度まで圧縮できる事案であっても,517万円での和解は依頼者の受ける経済的利益が283万円となり140万円を超えてしまうので,経済的利益が140万円以内に収まるよう依頼者に余計なお金を支払わせる和解をしてしまう,というわけです。
 判決文だけでは,本件司法書士の行った和解自体がそこまで不当なものだったかどうかは不明ですが,特に高額の過払金債権が発生している事案を司法書士に取り扱わせた場合,本来過払金の返還を請求できる事案であったのに,事件を弁護士に持っていかれるのが嫌だという理由で,依頼者に払わなくてもよい金額を支払わせる和解をしてしまう可能性が高くなってしまうほか,債権額が多すぎて本来任意整理による解決が不適当な事案(自己破産や個人再生で対応すべき事案)であっても,司法書士には自己破産や個人再生手続きの代理が認められていない(この場合,司法書士ができるのは書類作成の代行のみ)ので,無理やり任意整理で対応しようとしてしまう可能性も高くなります。

 今回の最高裁判決は,司法書士の権限が及ぶか否かが裁判外の和解成立まで判然とせず,上記のように不当な事件処理の温床ともなりかねない司法書士会主張の解釈(経済的利益基準)は妥当でなく,司法書士の権限が及ぶか否かは依頼者や相手方などの第三者との関係でも客観的かつ明確な基準によって決められるべきであるとして,弁護士会主張の解釈を採用したわけです。
 債務整理や司法書士の権限について,通常法律の知識に乏しい消費者を保護する観点からは,司法書士会の主張は取り得ないものであり,弁護士会主張の解釈を採用する必要があったと言えます。


 とは言え,認定司法書士の法律事務が認められるようになって以来,債務整理事件を手掛ける司法書士は10年以上にわたり,経済的利益説を根拠に受任段階では事実上何の制限も無く債務整理事件を受任してきたのも事実であるところ,今回の最高裁判決により,債権額140万円を超える案件の処理はすべて違法であり,これまで当該案件に関し司法書士が受け取った報酬は,不法行為による損害賠償としてすべて依頼者に返還すべきということになりました。
 これにより,今後司法書士が債務整理事件を受任できる範囲はかなり限定されるだけでなく,過去に処理した事件についても弁護士会による容赦のない「非弁取締り」,悪く言えば「司法書士狩り」が行われるでしょうから,特に債務整理事件を数多く手掛けてきた司法書士は壊滅的な打撃を受けることになりそうです。
 一方で,過払金返還請求はすでにピークを過ぎ,弁護士自体の社会的イメージも大きく低下する中で,「勝者」である弁護士側の未来も暗いと言わざるを得ません。近い将来に消滅が見込まれるようなシマを巡って繰り広げられた弁護士と司法書士の不毛な争いは,裁判の結果や法律論にかかわりなく,一般社会からは両者の「共倒れ」に終わったと認識されることになるかも知れません。

 ・・・以上,業界の経験者としてコメントしましたが,もう弁護士をやる気のない黒猫には,もはやどうでも良い話でもあります。
 これからア○ィーレとかが司法書士狩りのCM一生懸命流して,現場で「あれどういうことなの?」とか聞かれる事態を想像すると,まじウザいです。